壁画


鹿沼仲町呉服店常陸屋」(富山亮社長)店内で現在、巨大な「壁画」作りが進んでいる。壁に縦2メートル、横7メートルの巨大な麻紙を貼り、そこに日光市在住の画家香川大介さん(29)が墨絵を制作中。店の営業時間中も描いており、タイミングが合えば創作過程を見ることもできる。

 香川さんは福岡県出身で、3年前に日光市明神にアトリエ「工房桂」を構えた。下描きを行わず、筆で幻想的なイメージを直接ぶつける画風が持ち味。

 昨年の個展で富山社長は香川さんと知り合い、店に飾る作品を依頼。麻紙を貼っての壁画案が出た後、香川さんが「ここに描きたい」とした場所から棚や商品を撤去、巨大な“カンバス”とした。このサイズでの墨一色の壁画は、香川さんにとっても初挑戦という。

 麻紙を作ったのは、本県、特に鹿沼で名産だった麻の伝統を受け継ぐ「野州麻紙工房」(大森芳紀代表)。栽培から紙すきまでを実践し、ランプ傘の創作なども行っている。

 昨年秋、2人は直接同工房を訪れ、大森代表と麻紙の紙質を詳細に協議。「紙は『麻の麻らしさ』を強調した。自分もこの大きさの麻紙に描かれる絵を見るのは初めてで、とても光栄」と大森代表。

 香川さんは「麻紙は墨のにじみ方が不均一で、普通の紙より難しい。だがその効果、やりづらさを楽しんでいる」と話す。「何の絵か、との説明は自分でも困難」という幻想的な図像だが、創作前に見て回った鹿沼彫刻屋台や、店の前を通り日光へ続く例幣使街道のイメージが根底にあるという。

 昨年12月から描き始めた絵は今後、一時的な作業中断を挟みつつ3月中の完成を目指す。新年度には店の隣に観光施設「まちの駅 新・鹿沼宿」も完成予定で、施設を拠点に中心街めぐりをすれば、この作品も楽しめそうだ。